はじめに：治療が終わっても、まだ終わらない「日常回復」
抗がん剤治療を終えたとき、多くの方が口にされるのは安堵の言葉です。
「もう大丈夫」「ここまで来られた」――それは確かに、長く険しい道のりの終着点。
けれど、実際には多くの場合、そこで“すべてが終わる”わけではないといえるでしょう。
再び髪が生え始め、日常を取り戻していく幸せな経過の中でも、
新たな悩みや不安が顔を出すことがあります。
「以前とは違う髪質に戸惑ってしまう」
「もう一度、自分らしく外に出たいけれど勇気が出ない」
医療が「命を救う」仕事なら、
美容は「元の日常を取り戻す」役割かもしれません。
CISTAは、そんな“治療のその先”にある課題に、
美容師としての技術と心で向き合っています。
第1章：「治療のあとの空白」を埋める存在として
抗がん剤治療を終えた後、髪が再び生えてくる――それは新しい希望の象徴ともいえます。
けれどその希望の裏には、「誰にも相談できない戸惑い」があるのも事実です。
医療現場では、治療を終えた方の「髪の変化」にまで手を差し伸べられることは、
まだ充足しているとはいえません。
心身のケアを支えるカウンセラーやケースワーカーがいても、
“髪をどう扱えばいいか”という専門的な部分は、
多くの方が自力で向き合わなければならないことも多いのです。
私たちCISTAは、その“空白の時間”にそっと存在できればと思っています。
医療の手が届きにくい「元の日常の再スタート」を、美容の力で支える。
それが、私たちが担うひとつの役割だと自負しています。
第2章：美容師が医療の後にサポートでできること
CISTAでは、抗がん剤治療後の髪に対する特別な縮毛矯正を行っています。
それは、通常の施術とはまったく異なるアプローチです。
髪の再生フェーズや毛質の変化を見極め、
薬剤濃度・pH・温度を一人ひとりに合わせて細かく調整していく。
それは単なる「美容技術」ではなく、
お客様の“新しい髪の人生”を共に設計するような仕事です。
病気を治療できる医療従事者の方々と異なり、
私たちが最前線にいることはできません。
けれど、治療のあとに訪れる“元の生活との段差”をならすことならできるのではないでしょうか。
たとえば髪が整うと、人は外に出て、親しい人と会い、
再び社会の中へと歩み出せる。
その背中に自信を渡すのが、美容師という存在の力だと信じています。
第3章：前へ進む力をつくる美容
私たちCISTAが目指しているのは、「髪を整えること」では終わらない美容です。
お客様が鏡を見つめたとき、
「これならまた私、頑張れそう」と思える。
その“前へ進む力”を、髪を通じて取り戻していただくことが、
私たちができる美容だと考えています。
施術の後に見せてくださる小さな笑顔、
ご家族に会う勇気を取り戻したという報告、
帽子を外して外に出られたという言葉――
それらが私たち美容師にとっての最高の報酬です。
美容師は「技術者」でありながら、
同時に「日常の再起動を担う仕事」も請け負っているのでしょう。
そのためには、知識や手技を磨くだけではなく、
お客様の髪の“今”と“これから”を理解し、
最適な方法を選び抜く判断力が必要です。
その積み重ねが、髪だけでなく、
お客様自身の「より前へ進む自信」へとつながっていくのだと、
私たちは感じています。
第4章：回復後の未来へ ― 美容師が社会にできる役割
CISTAが目指しているのは、
この技術と考え方を“ひとつの文化”として広げていくことです。
治療後の髪の悩みは、まだ社会の中で十分に知れ渡ってはいません。
しかし確かにそれは存在し、悩んでいる方が多くいらっしゃる。
そして、美容師がその元の日常を取り戻す“回復”を支えることができる――
この事実をもっと多くの人に知ってもらいたい。
将来的には、同じ志をもつ美容師が全国でこの技術を提供できるよう、
知識とノウハウを共有する仕組みづくりも進めていきたいと考えています。
“回復美容”が特別なものではなく、
誰もが自然に受けられるケアのひとつになる未来を目指して。
結び：日常を取り戻す、その瞬間の笑顔のために
私たちが目指すのは、“奇跡を起こすこと”ではありません。
再び自信を持ち、鏡を見つめ、
少しだけ目線を上げる――
その小さな自信と確信の積み重ねが、
人を前に進ませるのだと思っています。
医療による治療が“命をつなぐ”ものであるなら、
美容は“生き方をつなぐ”ものでありたい。
CISTAはこれからも、髪を通じて
「日常を取り戻す」ための小さな光を灯し続けます。
