ブログをご覧になっていただきありがとうございます。
国立がん研究センターの調査では、年間100万人ほどの方々が新たにがんと診断されていると公表されています。
そしてそのうちの22.2%の患者さんに、抗がん剤治療の副作用による「脱毛」がみられ、人口比半分として10万人強の女性が脱毛に悩んでいるというのが現状といわれています。
さらに困ったことに、この10万人を超える方々に「クセ毛」という治療後の新たな悩みとして発生してしまうことは、実はあまり知られていなく、多くの方々は脱毛後の新しい髪の毛が生えてきて初めて気づくことが多いのだそうです。
少し前置きが長くなってしまったので、途中省略させていただきますが、残念ながら新たに生えた再生毛はクセ毛として再生されて生えてしまいます。
ただ私個人としてはこのクセ毛の悩みへの対処法は「縮毛矯正をかける」というのが現状最善策かなと思っていて、私個人が施術可能な技術ということもあって、縮毛矯正メニューとしてがんサバイバーの方へのサービスの提供をさせていただいています。
ご存知の方もいるかと思いますが、当店のブログのカテゴリーにもご用意している「抗がん剤治療後の方への縮毛矯正」では、治療後のクセ毛に悩みそして縮毛矯正をかけるにあたって情報を探している方々への微力ながらの情報共有ができればと思いこのような記事を書かせていただています。
そこで、今回の記事では「抗がん剤治療後のクセ毛に対する施術の難しさ」についてご説明いたしますので、ご興味あればご一読ください。メニューは絞って縮毛矯正について解説しています。

「再生毛の髪内部の状態」
まずは、抗がん剤治療が終わり新しく再生された毛髪「再生毛」がどんな状態なのかからご説明させてください。
髪の毛を製造する細胞を「毛母細胞」というのですが、こちらの毛母細胞は抗がん剤治療によって影響を受けてしまうため、おおよそ数年間は生えてくる髪の毛に望まない問題を与えてしまうという悲しい現実があります。
一般的には、直毛だった方がクセ毛になり、もともと癖っ毛だった方は非常に強いクセ毛となってしまいますし、白髪も以前に比べて多くなってしまうことが多く見受けられます。
次にそんな影響を受けてしまった再生毛の内部で何が起きているかというと、いわゆる髪内部成分がスカスカの状態となっています。
ご経験ある方は頷かれると思いまうすが、生え始めの2ヶ月ぐらいは赤ちゃんのようなフワフワの毛が生えてきます。
重力ゼロのような、ホントに軽い髪の毛が生えてくるでしょう。
そして月日が経つに従い、少しずつ内部のタンパク質が量産されていく感じです。
まさに細胞の復活と呼べるほど神秘的なことですが、実は縮毛矯正をかけることにおいては頭の痛い最初の障壁となって立ちはだかるといえます。
なぜなら、縮毛矯正は髪内部タンパク質の中の結合を切ったり、再結合することによって施術する技術なので、毛髪内部の各種成分が不足していると、そもそも縮毛矯正をかけること自体が困難と言わざるをえません。
ですので、いわゆる髪の体力・耐久力のない状態で、化学反応を起こし縮毛矯正をかけるということが、いかにリスクがあって難しいかをご理解いただけたかと思います。

「施術によって、できることとできないこと」
では、縮毛矯正をかければ髪の全ての問題が解決されるかというと、さすがにそれは無理ですと先にお伝えさせてください。
なぜなら、縮毛矯正はクセ毛をまっすぐに伸ばす施術であってそれ以上でもそれ以下の機能もありません。
しかしながらクセを伸ばすことによって、あなたが得られるものも多くあるでしょう。
たとえば代表的なものでいうと、再生毛の前髪はなぜか上を向いて生えてきます。
これ何を意味しているかわかりますか?
つまり前髪が下におりないということで、ご本人は非常につらいです。
多くの抗がん剤治療を終えた方々が直面する真剣な悩みです。
そんな緊急お困り度上位のお悩みでも、縮毛矯正をいい感じにかけてあげると、「あら不思議」しっくりお顔と馴染むようにおりてきます。
もうこれだけでも喜ばれるお客様は多いです。
そして次に、このガンサバイバーのための縮毛矯正をかけられるお客様が悩まれている問題として

「髪がムチャクチャ跳ねる!!」どーしたらいい?
これは最近流行りの「外ハネ」とは異なり、わざと跳ねさせている感じでもありません。
前方に向かって跳ねる方もいらっしゃいますし、チョココロネのようにぐるんぐるんになってしまうことも多く見受けられます。
こちらについても横の髪の毛をまっすぐにしてあげることで、一気にヘアスタイルとして輝きますのでご安心ください✨
施術をしていても、この頃にはお客様のお顔は大変明るくなってきます。よかったですね。
しかし、ここで「できないこと」についてもお客様には知っておいていただきたいと強く思っています。
そのできないこととは、端的に申し上げて「髪の長さは縮毛矯正をかけても長くならない」ということです。
当たり前と言えば当たり前なのですが、ここにお客様と私たち美容師の大きなギャップがあると思っていて、事前のすり合わせができていないと大きなトラブルとなってしまうこともあるとご記憶ください。
ではどんなギャップが存在するのかというと、
それは、お互いが思い描く「完成したヘアスタイルの違い」といえるでしょう。
一般的にお客様は、髪が短い=ショートヘアの女優さんを思い描くのですが、一方美容師はトップとフェイスラインの髪がまだ短いので、シルエットを作れない理由でヘアスタイルとして成立させることが難しくなります。
ですので、お客様とは最初に今後の髪の伸ばし方について確認をします。
ウィッグを継続したかたちでどんどん伸ばしていくのか?
もしくは、どうしても前髪・トップの髪の毛は伸びるのがゆっくりなので、トップと前髪が伸びてくるのを待ちながら襟足とサイドを切って、ヘアスタイルを作ることを優先するか?
おおまかにこの2つの方法でお客様ご自身の理想に近づけていきます。
日常生活の観点からみると、ウィッグを継続した場合は縮毛矯正をかけることによって、ウィッグが非常に被りやすくなります。根本から浮いてしまうことがないので、見た目の違和感も無くなりだいぶ楽になります。
また、トップと前髪の毛が伸びるまでは、襟足やサイドの髪を切っていく方法もアリだと思います。なぜなら嬉しい効果もちゃんとあるからです。
それは、今現在生えている髪の長さにもよりますが、日常的にウィッグを外す生活も可能になるということです。
先ほど申し上げた通り、ショートヘアの女優さんみたいにはなれないのですが、「いるよね、こういう人」って感じにはできるでしょう。
私がガンサバイバーのための縮毛矯正でお越しいただいたお客様にアドバイスさせていただいているのは、なにか人に注目されるような場面だったり、病気のことを詮索されたくないお相手と会われる際は「ウィッグを被ったほうがいいですよ」とお伝えさせていただいています。
逆にご近所のコンビニだったり、オープンな感じの職場でしたらウィッグを外しても大丈夫じゃないかなと背中を押させていただいてます。
どちらにせよ、それぞれの方の苦痛から解放されることはできるので、まさに縮毛矯正をかけるというのは最善策かなと実感しています。
いがいに髪の悩みって根が深くて、解消すると笑顔になっていただける。
凄いことだなと、日々美容師ながらに感じています。

「抗がん剤治療後の髪への「施術の難しさ」-お客様編-」のまとめ
いかがでしたでしょうか?
当店にいらっしゃるお客様も口々に、
「どうしていいか分からなかった」
「情報がなくて困っていた」
とおっしゃいます。
そうですよね。
どうしても、医療的な情報だったりウィッグメーカーさんからの情報がほとんどではないでしょうか?
でもそれだと「髪のプロフェッショナル」として、現場の美容師のよりリアルなアドバイスのほうが適していることもあるでしょう。
元の日常を取り戻すためには、
・お客様の今の現状から何ができるのか?
・今後の髪の伸ばし方や、ヘアケアなどのアドバイス
このようなことを、みなさん聞きたいのだと思いますし、有益な情報をお伝えできればなと考えています。
抗がん剤治療後の髪への縮毛矯正は、治療がひと段落した後の「最初で最大の悩み」を解決する方法です。
命より大事なものがないのは当然ですが、女性にとって美容・容姿は同じぐらい大事なものといえるでしょう。
より笑顔になれる前向きな方法を探しましょう。
CISTA