抗がん剤治療が終わり、少しずつ髪が生え始めた。
髪が戻ってきたことに安心する一方で、治療前にはなかった強いクセや、細さ、白髪の増加、毛量の違いに戸惑う方も少なくありません。
このクルクルした髪は、いつかは元に戻るのだろうか。
以前と同じ髪型に戻れるのだろうか。
縮毛矯正をかけてくせ毛を整えると、治療前と同じ髪になるのだろうか。
この記事では、抗がん剤治療後に生えてきた髪がどのように変化していくのか、そして「髪が元に戻る」という言葉の意味をどのように考えればよいのかを、美容師の立場からお伝えします。
【結論】治療前とまったく同じ髪へ戻るとは限りません
抗がん剤治療後に生えてくる髪には、強いクセ、細さ、硬さ、白髪、毛量や伸び方の違いなどが現れることがあります。
時間の経過とともに治療前の髪質へ近づく方もいますが、変化の大きさや、その変化が続く期間には個人差があり、すべての方が同じ経過をたどるわけではありません。
また、回復美容は治療前の髪質へ完全に戻すための医療ではありません。今ある髪の長さ、毛量、クセの出方、毛髪体力を確認し、日常で扱いやすいヘアスタイルへ整えていく髪に特化したアピアランスケアです。
CISTAでは、最後の抗がん剤治療から2年以上が経過し、トップの髪が耳まで届いていることを縮毛矯正の受付基準としています。そのうえで、ご来店時の髪と頭皮の状態を確認し、施術できることと、今回はしない方がよいことを判断します。
抗がん剤治療後の髪に起こる変化
抗がん剤治療後に生えてくる髪は、治療前と異なる状態になることがあります。
- 以前より強いクセやうねりが出る
- 髪が細く、コシがなくなる
- 反対に、硬さやゴワつきを感じる
- チリチリしやすく、広がりやすくなる
- 白髪の割合が変わる
- 前髪やトップなど、部分によって伸び方が違う
- 以前より毛量が少なく感じる
治療後に現れる強いクセは、一般に「ケモカール」と呼ばれることがあります。
ただし、すべての方にケモカールが現れるわけではなく、現れ方も一様ではありません。
後頭部に強いクセが出る方もいれば、前髪やもみあげが細くチリつく方、頭全体に細かなうねりが出る方もいます。同じ方の髪でも、頭の場所によって太さやクセ、密度が異なる場合があります。
そのため、「治療後は必ずこのような髪になる」「何年経てば必ず元へ戻る」と、一つの経過に当てはめることはできません。
時間が経てば、治療前の髪質へ戻るのでしょうか
治療後に生えてきた髪のクセや質感が、時間の経過とともに変化し、治療前の状態へ近づいていく方はいます。
一方で、強いクセや毛髪の細さ、毛量の変化が長く続く方もいます。
髪は毎月少しずつ伸びます。現在毛先にある髪と、数か月後に根元から生えてくる髪は、同じ時期につくられたものではありません。
そのため、根元から新しく生えてくる髪の状態が少しずつ変化していても、毛先には以前の時期に生えた髪が残っていることがあります。
根元の髪質が落ち着いてきても、毛先に強いクセや縮れた部分が残っていれば、髪全体はまだ元に戻っていないように見えるでしょう。
「髪質が元に戻ること」と「元の日常に戻ること」は別です
抗がん剤治療後の髪について考えるとき、「元に戻る」という言葉には、いくつかの意味が含まれています。
- 治療前と同じ髪質へ戻ること
- 以前と同じ長さまで伸びること
- 自毛だけで髪型をつくれるようになること
- ウィッグを外して外出できるようになること
- 毎朝、自分で扱える髪になること
- 仕事や学校で髪を気にしすぎなくなること
髪質が治療前と完全に同じにならなくても、今ある髪を生かしながら、自毛で髪型をつくり、日常を過ごしやすくする方法を考えることはできます。
回復美容が目指しているのは、髪を治療前の状態へ完全に戻すことではありません。
今生えている髪を生かしながら、扱いやすく、違和感なく、人と会うときにも髪をあまり気にせず過ごせる状態へ近づけていくことです。
髪が短い時期に、縮毛矯正を急がないほうがいい理由
ケモカールの強いクセや広がりに悩んでいると、髪が短い時期から縮毛矯正をかけたくなるかもしれません。
しかし、縮毛矯正をかけられることと、その施術によって希望するヘアスタイルをつくれることは別です。
髪が短い段階では、薬剤を頭皮から離して塗ることや、状態の異なる部分を細かく塗り分けることが難しくなります。アイロン操作にも必要な長さがあり、クセが伸びても髪型をつくる長さが足りない場合があります。
前髪やトップの長さが足りなければ、縮毛矯正をしても全頭ウィッグを外せる状態になるとは限りません。
また、治療後の髪は、部分的に髪の太さや薬剤反応が異なることがあります。施術を急ぎすぎることで、現在ある髪の体力を必要以上に削ってしまえば、その後の髪型づくりが難しくなる可能性もあります。
急いで施術することより、なるべくダメージさせないことと、これからの髪型まで考えることが大切です。
縮毛矯正ができるようになるまでの期間にも、髪型をステキにする方法はあります
縮毛矯正がまだできない期間は、ただ我慢するだけの時間ではありません。
- 伸びるのが早い襟足ともみあげ部分を整える
- 今ある長さでまとまりやすい形へカットする
- 髪と頭皮へ負担をかけすぎないホームケアへ見直す
- 全頭ウィッグからトップピースへ移行する
- 必要な場面だけウィッグや帽子を取り入れる
特に前髪やトップ、顔まわりの長さや毛量が足りない時期には、トップピースが、自毛だけで過ごせるようになるまでの橋渡しになることがあります。頭全体を覆わないため、フルウィッグよりも負担を軽く感じる方もいます。
トップピースを使うことは、回復が遅れていることでも、以前の段階へ戻ることでもありません。
今の髪だけでは足りない部分を補いながら、髪が育つ時間もヘアスタイルを楽しんでいただくための選択肢です。
CISTAが回復美容の縮毛矯正をかける基準
CISTAでは、最後の抗がん剤治療から2年以上が経過し、トップの髪が耳まで届いていることを、縮毛矯正の受付基準としています。
これは、「2年経てば髪質が元に戻る」「2年経てば必ず縮毛矯正ができる」という意味ではありません。
薬剤を安全に塗り分け、アイロン操作を行い、施術後のヘアスタイルまで考えるために必要な、CISTA独自の基準です。
ご来店時には次のような点を確認しています。
- 髪の太さと密度
- クセやチリつきの強さ
- 頭の場所による髪質の違い
- 前髪、トップ、顔まわりの長さ
- 現在の毛量と、つくれるヘアスタイル
- カラーやセルフカラー、エクステなどの施術履歴
- 髪と頭皮の状態
- 薬剤と熱に耐えられる毛髪体力が残っているか
その結果、縮毛矯正を行える場合もあれば、縮毛矯正以外の施術を勧める場合、今回はホームケアを見直す場合もあります。
施術をしないことは、何もできないという意味ではありません。
今ある髪を守り、次にできることを残すための、積極的な「やらない判断」です。
回復美容で、できること・できないこと
髪の長さと毛髪体力が施術に適していれば、縮毛矯正によって強いクセや広がりを扱いやすくできる可能性があります。
回復美容では、縮毛矯正だけを答えにするのではありません。現在の髪の状態に合わせて、カットやカラー、ホームケアなど、その時期にできる方法を選びながらヘアスタイルを整えていきます。
回復美容で目指せること
- 強く波打つクセや広がりを扱いやすくする
- 前髪を下ろしやすくする
- 後頭部や襟足のボリュームを整える
- 乾かしたときのシルエットを小さくする
- まだ短くてもヘアスタイルを整える
回復美容でも約束できないこと
- 治療前とまったく同じ髪質へ戻すこと
- 一度の施術ですべての質感を均一にすること
- まだ伸びていない部分の長さや毛量を補うこと
- 2年経過すれば必ず施術できること
- 一度損傷した髪を元の状態へ戻すこと
回復美容は、治療前の髪を再現する施術ではありません。
今ある髪に何ができるのかを見極め、日常の中で扱いやすい髪へ整えていくための美容技術です。
髪が元に戻るのを待つだけではなく、今ある髪と向き合う
抗がん剤治療後の髪が、治療前とまったく同じ状態へ戻るかどうかを、事前に正確に予測することはできません。
時間とともに以前の髪質へ近づく方もいれば、クセや細さ、毛量の変化が長く続く方もいます。
だからこそ、「元に戻るまで待つ」だけではなく、その時点の髪で何ができるのかを考えることが大切です。
今はウィッグを被って、髪を育てる時期なのか。
カットやトップピースで日常を整える時期なのか。
縮毛矯正を検討できる段階に入っているのか。
髪の現在地によって、選べる方法は変わります。
施術を急ぐのではなく、今できることと、まだしない方がよいことを見分け、その先の生活まで考える。
それが、CISTAの考える回復美容です。治療の先にある生活を、髪に特化した美容技術で後押ししていきます。
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