もうウィッグを外したいです

抗がん剤治療後、髪が少しずつ生えてくると、今度は「もうウィッグを外したい」という気持ちが出てくる時期があります。

特に初夏から夏にかけて、湿気や気温が高くなる時期は、ウィッグの蒸れや暑さが強いストレスになります。

ただ、外したいと思っても、実際に外してみると髪が大きく膨らんだり、ケモカールが強く出ていたりして、「このままでは外に出られない」と感じる方も少なくありません。

この記事では、抗がん剤治療後にウィッグを外したくなった時、何を基準に考えればよいのかを、美容師の立場からお伝えします。


「もうウィッグを外したい」そう思う方、多くいらっしゃいます

ウィッグを外したい気持ちは、治療後何ヶ月になったら始まるなんて、期間によって決まるものではありません。

治療後、まだ髪がほとんど生えていない時期から3ヶ月くらいまでは、ウィッグをつけていることが安心につながる方が多いです。

しかし、その後に髪が生え始め、クセ毛やケモカールが出てくると、状況は変わります。

自毛が伸びてきたことで、ウィッグの中が膨らみやすくなり、ネットをかぶって、その上からフルウィッグをつける必要が出てきます。

自毛、ネット、フルウィッグ。

この状態は、暑い時期にはかなり不快です。

「外に出る時は仕方ないけれど、家にいる時くらいは外したい」
「鏡を見た時に悲しい気持ちになりたくない」
「でも外すと髪が爆発して、とても人に見せられない」

こうした声は、とても自然なものです。


ウィッグを外しやすい人と、まだ焦らない方がいい人の違い

ウィッグを外せるかどうかは、髪が「あるか、ないか」だけでは決まりません。

大切なのは、ヘアスタイルとして形が作れるかどうかです。

髪型には、長さの差が必要です

ヘアスタイルは、髪の長い部分と短い部分の差によって作られます。

トップ、サイド、襟足の長さに差がないと、どうしても坊主に近い印象になりやすく、女性らしい丸みを作ることが難しくなります。

特にトップの長さは重要です。

トップに長さがないと、頭の丸み、つまり外側のシルエットが作れません。

前髪よりも、こめかみの髪は印象を作る大切なところです

前髪は、顔の印象を大きく変える部分です。

ただ、ヘアスタイルとして見ると、前髪は必ずしも長くなければいけないわけではありません。

短い前髪のショートヘアでも、素敵に見えるスタイルはあります。

それよりも重要になるのが、前髪の横、こめかみ部分の髪です。

トップの丸みが外側のフレームを作るのに対して、こめかみの髪は顔まわりの内側のフレームを作ります。

ここに髪があるかどうかで、顔の見え方や印象は大きく変わります。

ケモカールが強いと、ウィッグも外しにくくなります

ケモカールや強いクセが出ている場合、自毛が膨らみ、ウィッグ自体が浮きやすくなることがあります。

そのため、ウィッグを安定させるためにネットをかぶり、その上からフルウィッグをつけることになります。

当然、暑くなります。

外したいと思う気持ちが強くなるのは、とても自然なことです。


ウィッグを外しやすい環境にいるか、外しにくい環境にいるか

ウィッグを外せるかどうかは、髪の状態だけでなく、周囲の環境にも大きく左右されます。

比較的外しやすい環境にいるのは、医療関係のお仕事をされている方です。

医療現場では、治療後の髪の変化について予備知識がある方も多く、周囲が過度に驚いたり、変に構えたりしにくい傾向があります。

一方で、子どもに関わるお仕事をされている方は、外しづらさを感じることがあります。なんせ子供は見たままを言ってしまう。子供だから遠慮はできません。

それは決して周囲の人たちが悪いわけではありません。

ただ、環境によって「外せる・外せない」の感じ方は変わります。

だからこそ、ウィッグ卒業は一律に考えなくていいのです。


まず確認するのは「髪型が作れる長さがあるか」です

「もう外したい」と思った時、最初に見るべきなのは、髪の長さです。

ただし、単純に何センチあるかだけではありません。

ヘアスタイルとして、長さの差が作れるかどうかを見ます。

トップの長さが足りない場合は、外側のシルエットが作れません。

その状態で無理にウィッグを外すと、人の目もチラチラ気になってしまうかもしれません。

しかし、トップがまだ短い場合でも、サイドや襟足をすっきり短くすることで、トップが長く見えるように整えられることはできます。いわゆるスッキリしたベリーショートな雰囲気です。

このように5cm程度トップに長さがあれば、クセの強さにもよりますが、カットだけでも印象が大きく変わることがあります。

ウィッグを外せるかどうかは、髪が伸びたかどうかではなく、髪型として整えられるかどうかが重要ということです。


ウィッグ卒業は、「できる・できない」で考えなくて大丈夫です

ウィッグを外すというと、「完全に卒業する」ことを想像する方が多いかもしれません。

けれど、実際にはもっと柔軟に考えて大丈夫です。

家の中だけ外す。
近所のスーパーやコンビニだけ外す。
親しい友人に会う時だけ外す。
職場ではしばらくウィッグを使う。

このような「条件付きのウィッグ卒業」でもいいのです。

トップピースという選択肢

トップピースは、とても使い勝手のよいアイテムです。

足りないトップや前髪を補う目的なので、すぐにヘアスタイルとしての形を作りやすくなります。

ただし、トップピースはストレート毛が主流です。

そのため、ケモカールが強く出ている自毛と、ストレートのトップピースがなじみにくいことがあります。

この場合、トップピースを自然になじませるために、縮毛矯正を組み合わせるという選択肢があります。

ただし、髪の状態によってはすぐに施術できない場合もありますし、あくまでも短すぎる状態でかけるのは、トップピースをつけるためだと割り切って考えた方が無難です。

大切なのは、ベストではなくベターな完成イメージを持てるかどうかです。

帽子と前髪ウィッグの組み合わせ

おうちでの突然の荷物の受け取りや、少しだけ外に出る時のために、玄関近くに帽子を用意している方もいます。

ただ、生え始めの時期はうっすらしか生えていないので、帽子だけではスキンヘッドに近い印象に見えてしまうことがあります。

襟足やサイドに少し髪が生えてきた段階であれば、帽子に前髪ウィッグを組み合わせることで、安心感が出やすくなります。

見た目も自然になりやすく、おしゃれな雰囲気も作りやすい方法です。

カットだけで印象が変わることもあります

トップにある程度の長さがあり、クセが強すぎない場合は、カットだけでも印象が変わることがあります。

特にサイドと襟足をすっきりさせることで、トップに丸みが出やすくなり、髪型として見えやすくなります。

ここでお伝えしたいのは、すべてを一度に解決しようとしなくても、今できる範囲を整えるだけで、気持ちも見た目もスッキリ軽くなることがあります。


「条件付き」で考えると、ウィッグを外せる場面も見えてきます

「もうウィッグを外したい」と思う時、それはウィッグをつけることによる小さなストレスが積み重なっている状態です。

そのまま我慢を続ければ、ストレスは増えていきます。

だからといって、明日から完全に外すという選択肢は現実的ではありません。

大切なのは、どの場面なら外せるかを考えるといいと思います。

家にいる時。
家族の前。
近所への買い物。
親しい友人と会う時。
職場。
人前に立つ場面。

それぞれの場面で、必要な安心感は違います。

「外せる・外せない」は、髪の状態だけでなく、その場所にいる人との関係性によっても変わります。

全部外すことだけが正解ではありません。

条件付きで少しずつ外していくことも、自毛デビューへの大切な一歩です。


ウィッグを外したいと思うのは、回復が始まっている証拠です

「もうウィッグを外したい」

そう思うことは、わがままではありません。

それだけ髪が生え、日常を取り戻したい気持ちが大きくなってきた証拠です。

ただし、無理に一気に卒業する必要はありません。

家だけ。
近所だけ。
帽子と組み合わせる。
トップピースを使う。
カットで整える。
必要であれば、時期を待つ。

方法はいくつもあります。

大切なのは、「まだ外せない」と決めつけることではなく、「どんな条件なら外せるだろう」と考えてみることです。

意外と、ウィッグを外すことは難しくない場合もあります。

今の髪にできることを一つずつ確認しながら、無理のない形で自毛デビューを考えていきましょう。

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