思春期のがん治療後の髪に、回復美容ができること
回復美容は、年齢を限定したものではありません。
抗がん剤治療後の髪に悩む方であれば、年代を問わず対象になります。
ただ、個人的な想いとして、思春期の方に対する回復美容は、特に大切にしたいと感じています。
理由はとてもシンプルです。
仕上がった時の、鏡越しの彼女たちの笑顔が特別だったからです。
思春期にとって、学校はとても大きな世界です
思春期の子どもたちにとって、学校はとても大きな世界です。
大人と違い、まだ小さなコミュニティの中で毎日を過ごしています。
その子たちにとって、学校という場所は、生活の中心そのものです。
そして学校では、「普通であること」の意味が、大人の社会とは少し違うように感じます。
普通とは、平凡という意味ではありません。
目立たないという意味でもありません。
自分だけが「変」ではない。
その安心感を持って、学校というコミュニティの中にいたいのだと思います。
もちろん、学校生活の中で、誰にも知られずに過ごすことは難しいかもしれません。
仲の良い友達は、励ましてくれるでしょう。
応援してくれるでしょう。
そして、一度しか話したことのないようなクラスメイトであっても、困っている姿を見たら、きっと何かを感じてくれるはずです。
まずは、身の回りにいる味方を頼もしく思いながら、回復美容について知ってもらえたらと思います。
部活動、修学旅行、写真。思春期には一度しかない時間があります
部活動をされている方もいると思います。
抗がん剤治療が終わって、また登校する頃は、まだフルウィッグでの登校になることが多いでしょう。
文化系の部活動であれば、大きな問題は少ないかもしれません。
ただ、運動系の部活動の場合は、着替えや活動中の暑さ、ウィッグのずれなど、困ることもあるかもしれません。
治療後は体力や免疫の面でも、すぐに無理をすることは難しいと思います。
それでも、好きな部活の友達や、部室の空気が、安心につながることもあるはずです。
修学旅行や学校行事もあります。
楽しみと一緒に、少しの不安もあるかもしれません。
写真をたくさん撮る時期でもあります。
修学旅行も、部活動も、文化祭も、そして恋愛も。
思春期にしか経験できない時間を、思いきり楽しんでほしいと思っています。
髪が伸びても、ケモカールで悩むことがあります
ここでは、抗がん剤治療が終わってすぐではなく、1年から2年ほど経過している方を想定してお話しします。
治療が終わって2〜3ヶ月ほど経つと、再生毛が生え始めることが多いです。
そして、その再生毛は少しずつ伸びていきます。
若い方の場合、髪の成長スピードや回復の早さに驚くことがあります。
1年ほど経つ頃には、ボブのヘアスタイルを目指せるかもしれない、という方も珍しくありません。
ただ、その頃にもう一つの悩みを抱える方もいます。
ケモカールと呼ばれる、クルクルしたクセ毛です。
ケモカールは、治療の影響によって一時的に経験することがあります。
毛穴の形が変化することでクルクルになったり、毛髪内のタンパク質が安定しないことでジリジリした髪が生えてきたりします。
若年層の場合、毛髪内のタンパク質の安定は早い印象があります。
ジリジリした質感は、気づかないうちに回復していることもあります。
しかし、クルクルしたクセは、すでに生えている部分ほど強く残ることがあります。
特に毛先にいくほど、クセが強く残りやすいです。
これは、自然に時間が経てばすべて元通りになる、というものではありません。
髪は長くなったのに、クルクルした髪のせいでウィッグを被らないといけない。
そのままでは学校に行けない。
そう感じている方もいるかもしれません。
思春期の回復美容では、縮毛矯正が大きな意味を持ちます
そんな時に、回復美容として、クルクルした再生毛に縮毛矯正をかけることが選択肢になります。
もちろん、回復美容は魔法ではありません。
毛先が生え揃っていない状態で、すべてを完璧に整えることは難しい場合もあります。
今の髪の長さや毛髪体力によって、できることは変わります。
ただ、トップの髪が耳たぶぐらいまで届いているなら、悩みを解消できる可能性があります。
クルクルしたクセのないボブになれば、ウィッグを外せるかもしれません。
ウィッグを気にせず、思いきりスポーツができるかもしれません。
そして何より、カメラを向けられた時に、何の不安もなく素の笑顔を取り戻せるかもしれません。
社会人にとって回復美容が「社会復帰へ接続するもの」だとしたら、学生にとっての回復美容は「学校生活を取り戻すもの」だと思っています。
普通のひとりの学生に戻るために、回復美容はあります。
たくさんの笑顔の写真を。
楽しい学校生活を。
取り戻してほしいと思っています。
思春期の時間は、一度しかありません
回復美容の記事で、年代にフォーカスして書くことは多くありません。
年齢によって、大変さが単純に変わるわけではないからです。
それでも、ひとりの大人として考えることがあります。
思春期の子どもたちに、今だけの時間を取り戻してあげたい。
人生で一番、心が動くその時期に、たくさんのことを経験してほしい。
その原動力になるのは、自分への自信だと思います。
ひとりの普通の学生に戻してあげること。
その方法があることを、知ってほしいと思っています。
もし本人ではなくても、ご家族や周囲の方がこの記事を読んでいるなら、必要としている方に伝えていただけたらと思います。
鏡越しの笑顔が、特別でした
子どもは、大人が思っている以上に我慢強いものです。
ただ、その我慢が終わる瞬間があります。
回復美容で縮毛矯正をかけ、仕上がった自分を鏡で見る瞬間です。
今まで張りつめていたものがほどけて、ふっと笑顔になる。
その表情を見ると、ご本人だけではありません。
一緒に見守ってきた親御さんも。
治療に関わってきた医療関係の方も。
学校で支えてきた方々も。
きっと同じように心が動くのだと思います。
その子を支え、心配し、安心する。
元の日常を取り戻した瞬間です。
だから私は、この仕事を続けています。
仕上がった時の、鏡越しの彼女たちの笑顔が特別だったからです。

