抗がん剤治療で髪が抜ける前に、何を準備すればいい?|髪を切る時期・ウィッグ・帽子・抜けた髪の処理

抗がん剤治療によって脱毛する可能性があると知らされたとき、多くの方が最初に考えるのは髪のことです。

「治療前に短くした方がいいの?」
「自分で剃っても大丈夫?」
「ウィッグは先に用意するべき?」
「抜けた髪は、どうやって片づけるの?」

ところが、実際にどのようなことで困るのかまでは、なかなか想像できません。

そこで今回は、抗がん剤治療前から脱毛が始まる時期までに、髪について準備しておきたいことを、美容師の立場からお伝えします。

※脱毛の有無や程度、始まる時期は、使用する薬剤や治療内容によって異なります。ご自身の治療については、主治医や看護師、薬剤師へご確認ください。

💡 【結論】治療前に短くすることは勧めます。ただし、坊主にはしません

抗がん剤治療による脱毛が予想される場合、CISTAでは、治療が始まる前に髪を短くしておくことをおすすめしています。

目安は、肩につく程度のボブや、丸みのあるショートボブです。

長い髪のまま脱毛が始まると、抜けた毛とまだ抜けていない毛が絡み合い、自分ではほどけない状態になることがあります。また、目に入る髪の量が多くなることで、気持ちまで滅入ってしまうことがあります。

あらかじめ扱いやすい長さにしておけば、脱毛が始まったあとの手入れや掃除の負担を少し軽くできます。

一方で、坊主のように極端に短くすることはおすすめしていません。「短くすること」と「すべて剃ること」は、同じではありません。

髪を切るなら、治療が始まる前に

髪を短くするなら、できるだけ抗がん剤治療が始まる前がよいと思います。

治療が始まってからは、体力が低下したり、体調が安定しなかったりすることがあります。その状態で美容室へ行くことが、思っていた以上の負担になるかもしれません。

治療の日程が決まり、体調が比較的安定しているうちに美容室へ行けると安心です。

ただし、これまでロングヘアだった方が、必ずショートにしなければならないわけではありません。

大切なのは、脱毛が始まったときに髪が絡まりにくく、自分や家族が扱いやすい長さにしておくことです。

CISTAでは、肩ぐらいのボブや丸みのあるショートボブにすることが多くあります。急に髪型を大きく変えることへ抵抗がある場合は、段階的に短くする方法もあります。

いつもの美容師さんに、病気のことを話した方がいい?

治療前に髪を切るとき、これまで通っていた美容師さんへお願いするのか、初めての美容室へ行くのか迷う方もいると思います。

これは、美容師さんとの関係性や、ご自身がどこまで話したいかによって決めてよいと思います。

長かった髪を急に短くしたいと言われれば、いつもの美容師さんは「何かあったのかな」と感じるかもしれません。

病気のことを話せる関係であれば、そのまま伝えてもよいでしょう。

詳しく説明したくない場合は、

「しばらく美容室へ来られないので、短くしておきたい」

と伝えるだけでも十分です。

長くお客様を担当してきた美容師の中には、治療を控えた方や治療中の方を担当した経験がある人もいます。事情をすべて説明しなくても、言葉の背景を受け止めてもらえることがあります。

一方で、いつもの美容師さんへ病気のことを知られたくない場合は、初めての美容室へ行くことも選択肢のひとつです。

その場合も、病気について説明する義務はありません。「イメージを変えたい」「しばらく美容室へ来られないので短くしたい」と伝えれば、カットはできます。

病気について、誰にどこまで話すかはご本人が決めることです。

いつもの美容師さんに任せても、初めての美容室を選んでも大丈夫です。ご自身が最も負担を感じない方法を選んでください。

なぜ坊主にすることをおすすめしないのか

髪が抜けると分かっているなら、先にすべて剃ってしまいたい。

そう思う気持ちは、とてもよく分かります。

髪が少しずつ抜けていく様子を見たくない。誰かに見られる前に、自分でバリカンを入れてしまいたい。その選択によって気持ちを整理できる方もいると思います。

しかし、日常生活や掃除のしやすさを考えると、CISTAでは脱毛に備えて坊主にすることをおすすめしていません。

坊主ほど短くなった髪は、タオルや枕、衣類などの布製品に入り込みます。一度入り込むと、掃除機や粘着クリーナーを使っても、きれいに取りきれないことがあります。

さらに、髪質によっては短く硬い毛が皮膚に刺さり、チクチクと痛く感じる場合があります。

ある程度の長さがあれば、目で見てつまんだり、まとめて拾ったりできます。しかし、細かく短くなった毛は、どこに付着しているのかも分かりにくくなります。

体調が優れない時期に、布製品へ入り込んだ短い髪を何度も掃除する。それは、想像以上に大変です。

坊主にしないことは、髪を惜しむためではありません。

その後の生活を、少しでも楽にするための選択です。

ウィッグは脱毛前に用意した方がよい?

仕事を続けながら治療を受ける方や、治療中も人と会う予定がある方は、治療前にウィッグを用意しておくと安心です。

脱毛が始まってから探そうとしても、体調や気持ちの状態によっては、店舗へ行ったり、複数の商品を比較したりすることが負担になる場合があります。

一方で、すべての方が治療前に高価なウィッグを購入しなければならないわけではありません。

多くの方にとって、髪がほとんどない状態で生活するのは初めての経験です。まだその生活を経験していない段階では、自分に本当に必要な機能も分かりません。

不安が大きい時期だからこそ、必要以上に高価なものや、自分の使い方には合わないものを選んでしまう可能性もあります。

もちろん、オーダーメイドウィッグを否定するものではありません。頭の形に合わせて作られる一点ものには、既製品とは異なる良さがあります。

ただ、これまで多くの方を見てきた美容師としては、ファーストウィッグは5万円前後のものでも、実用上十分なケースが多いと感じています。

最近のウィッグは、価格を抑えた商品でもよく作られています。また、自分が心配しているほど、周囲の人は他人の髪を細かく見ていないものです。

治療前に用意した方がよい方

  • 治療中も仕事を続ける
  • 通院以外にも外出する機会が多い
  • 人と会う予定が決まっている
  • 脱毛が始まってから探すことに不安がある

焦って決めなくてもよい方

  • 治療中は自宅で過ごす時間が多い
  • 帽子を中心に生活できる
  • 実際の使い方を確かめてから購入したい
  • 高価なウィッグを買うべきか迷っている

必要になる時期と使い方は、人によって異なります。

「治療前に買わなければ間に合わない」と焦る必要はありません。オンラインで購入できる商品もあるため、自分の生活に合わせて考えてよいと思います。

お住まいの自治体によっては、医療用ウィッグなどの購入費助成を受けられる場合もあります。購入前に、自治体や病院のがん相談支援センターへ確認しておくと安心です。

帽子は、柔らかく洗えるものを

髪がなくなって初めて、髪が頭皮をさまざまな刺激から守っていたことに気づきます。

脱毛中に使う帽子は、できるだけ柔らかく、金属部品などが頭皮へ直接当たらないものを選んでください。

自宅で過ごすときは、次のような帽子が使いやすいと思います。

  • 柔らかい素材
  • 縫い目や金属部品が頭皮に当たりにくい
  • 締めつけが強すぎない
  • 自宅で洗濯できる
  • 汗や皮脂を吸いやすい

外出するときは、ウィッグの上から帽子をかぶる方法もあります。

フルウィッグが必要ない場面では、前髪だけの部分ウィッグと帽子を組み合わせる方法もあります。脱毛中であっても、帽子を使ったおしゃれを楽しむことはできます。

また、再生毛が伸びてくると、頭の大きさや帽子の収まり方も変わります。

治療前にすべてを買い揃えるのではなく、その時期の髪に合わせて選び直してもよいでしょう。

抜け始めた髪の処理を楽にする方法

抗がん剤治療による脱毛は、髪を引っ張って抜くというより、日常の動作の中で「スルッと抜ける」ことがあります。

着替えるためにTシャツへ頭を通しただけでも、髪が衣類へ付着することがあります。

この時期に役立つのが、使い捨てのヘアキャップです。

ずっとかぶり続ける必要はありません。

  • 寝るとき
  • 着替えるとき
  • 帽子の下
  • 枕や寝具への付着が気になるとき

こうした場面で使うと、抜けた髪が衣類や布団へ広がりにくくなります。

出かける直前になって、洋服に付着した髪を粘着クリーナーで何度も取る。その負担を減らすためにも役立ちます。

お風呂や洗面所の排水口にも準備を

脱毛が始まると、お風呂場や洗面所にも髪がたまりやすくなります。

排水口には、使い捨てのフィルターを設置しておくと掃除が楽になります。髪がたまったら、フィルターごと処分できます。

排水口のキャッチャーを選べる場合は、ステンレス製も使いやすいでしょう。

プラスチック製品には髪がまとわりつきやすいのですが、表面が滑らかなステンレス製品は、比較的髪を取り除きやすい特徴があります。

美容室のシャンプー台でも、排水部分にはステンレス素材が多く使われています。

少しの準備ですが、体調が優れない時期の掃除を減らすことにつながります。

この時期に美容師ができること

脱毛が始まる前に、扱いやすい長さへカットすること。

これは、美容師ができることです。

そして治療が終わり、再生毛が少しずつ伸びてきたあとにも、美容師がお手伝いできることがあります。

生え始めから半年ほど経つと、襟足やもみあげが先に長くなり、全体のバランスが崩れてくることがあります。

この時期は、まだ完成した髪型を作るほどの長さがなくても、一度整えることはできます。

ただし、抗がん剤治療後の短い再生毛をどう扱うかは、一般的なカットとは少し異なります。どこを切り、どこを残すのか、判断に迷う美容師も少なくありません。

再生毛を整える場合は、抗がん剤治療後の髪を扱った経験のある美容師や、ウィッグを購入した店舗へ相談するのもひとつの方法です。

治療前に、すべてを知っておく必要はありません

実際にお客様から、「治療前に知っておきたかった」と聞くことがあります。

  • 頭皮冷却という選択肢があること
  • ウィッグをどこで買えばよいのか
  • どの程度のウィッグが必要なのか
  • いつまでウィッグを使うのか
  • いつから美容室へ行けるのか
  • 普通の美容室へ行ってもよいのか
  • どのようなシャンプーを使えばよいのか
  • 頭皮ケアは必要なのか
  • 治療後の髪がどう変化するのか
  • 強いクセやうねりが生える場合があること
  • 治療前とまったく同じ髪へ戻るとは限らないこと
  • 治療後に生じたクセを、どう整えればよいのか

このすべてを、治療前に理解する必要はありません。

ただ、「治療後に髪が生えてくれば、それですべて元通りになるとは限らない」ということは、先に知っておいてもよいと思います。

髪は、多くの場合、治療後に少しずつ伸びてきます。

その過程には、短い髪をカットで整える時期、帽子やウィッグを使う時期、伸びてきたクセへの対処を考える時期があります。

今すぐすべてを決める必要はありません。

その時期にできることを、一つずつ選んでいけば大丈夫です。

まとめ|すべてを一度に揃えなくても大丈夫です

抗がん剤治療による脱毛へ備えるため、CISTAでは治療前に髪を短くしておくことをおすすめしています。

ただし、坊主にする必要はありません。

肩ぐらいのボブや丸みのあるショートボブなど、抜けた髪が絡まりにくく、掃除や手入れをしやすい長さが現実的です。

ウィッグは、治療中も仕事や外出の予定がある方なら、治療前に用意しておくと安心です。一方、自宅で過ごす時間が多い方は、焦って高価なものを購入しなくてもよいかもしれません。

帽子は柔らかく洗えるものを選び、使い捨てのヘアキャップや排水口フィルターも準備しておくと、脱毛が始まってからの負担を軽くできます。

治療前に必要なのは、すべてを完璧に揃えることではありません。

まずは、これからの生活を少し楽にする準備から始めてみてください。

治療後の髪にも、その時期ごとにできることがあります

治療が終わると、髪は少しずつ生え始めます。その途中には、帽子やウィッグを使う時期、短い髪をカットで整える時期、伸びてきたクセへの対処を考える時期があります。CISTAでは、抗がん剤治療後の髪に特化したアピアランスケアを「回復美容」と呼び、髪の成長に合わせてできることをまとめています。

回復美容と治療後の髪について見る

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