抗がん剤治療後、産毛のような髪が少しずつ生え始めます。
髪が戻ってきたことに安心する一方で、伸び方や髪質が治療前と違うことに戸惑う方もいます。
「この伸び方で大丈夫?」
「どうして、こんなに髪がまとまらないの?」
「どんなシャンプーを使えばいい?」
「この短い髪で美容室へ行ってもいい?」
「白髪はいつから染められる?」
まだ完成した髪型を作れない長さでも、カットなど、その時期にできる施術を受けながら、生えてきた髪について美容師へ相談できます。
この記事では、髪が生え始めた時期に起こることと、美容師が現在の髪の何を見て、どのように今後の見通しを立てているのかをお伝えします。
※髪や頭皮の回復には個人差があります。治療、薬、発毛剤の使用、頭皮の痛みや炎症については、主治医、看護師、薬剤師、皮膚科医へご確認ください。
【結論】施術を受けながら、美容師とこれからの髪のタイムラインを作ることができます
美容室は、完成した髪型を作るためだけの場所ではありません。
まだ髪が短い時期でも、伸びすぎた部分をカットするなど、その時期にできる施術があります。
美容師は、治療終了からの期間、髪が生え始めた時期、現在の長さや太さ、毛量、クセなどを確認します。さらに、ご本人がこれからどのような髪型を目指したいのかを伺います。
それらを組み合わせることで、現在の髪がどの段階にあり、今何ができて、希望する髪型までどのように進んでいくのかを考えます。
今の生活を少し楽にする施術を受けながら、現在の髪と、これからの髪について知ることができます。
この短い髪で、美容室へ行ってもいい?
髪がまだ短いため、「美容室へ行っても何もできない」と考える方もいると思います。
しかし、完成した髪型を作れる長さがなくても、伸びすぎた部分を整えるなど、今の長さでできる施術があります。
ベリーショートほどの長さでは、わずか数ミリの違いでも、形や印象が変わることがあります。
美容師は長さを切るだけでなく、場所によって異なる毛量を見ながら、全体のバランスも整えます。
その施術を受けながら、今後どのように髪を伸ばしていくのか、毎日の髪をどう扱えばよいのかを相談できます。
美容師は、現在の髪と頭皮を見ながら、次のような点を確認します。
- 場所ごとの髪の長さ
- 髪の太さと密度
- 生えている方向
- クセやうねりの強さ
- 頭皮の乾燥や目で確認できる赤み
- ウィッグを着用したときの状態
そのうえで、今できる施術、毎日の扱い方、これから残して伸ばす部分について提案します。
美容師は、最初に何を確認しているの?
抗がん剤治療後の髪を初めて見せていただくとき、まず治療が終わってからの期間と、いつ頃から髪が生え始めたのかを伺います。
ホルモン治療を受けている場合は、そのことも確認します。
これは医療的な判断をするためではありません。
治療後の経過と、現在の髪の長さや状態を照らし合わせ、これからの髪を考えるための参考にします。
次に、頭の場所ごとに根元の髪を確認します。
ご本人にも根元を触っていただき、治療前の髪と比べて、太さや手触りがどの程度戻っていると感じるかを伺うことがあります。
さらに、トップと前髪の長さ、髪の太さ、毛量、ケモカールの出方を確認します。
ケモカールも、すべて同じ状態ではありません。
大きくクルクルと曲がっている部分もあれば、細かくジリジリとした手触りが目立つ部分もあります。
最後に、ご本人が今後どのような髪型を目指したいのかを伺います。
現在の髪の状態と、ご本人が希望する髪型。その両方が分かることで、これからの見通しを考えられるようになります。
美容師と、自分の髪のタイムラインを作ります
髪が何センチ伸びたかだけでは、今後の見通しを立てることはできません。
美容師は、次のような情報を組み合わせて考えます。
- 治療終了からの期間
- 髪が生え始めてからの期間
- 現在の髪の長さと伸び方
- 根元の髪の太さと手触り
- トップや前髪の毛量
- 場所ごとの髪質の違い
- ケモカールの強さ
- 現在使用しているウィッグ
- ご本人が希望する髪型
これらを確認すると、現在の髪がどの段階にあり、今できることは何か、次に何を目指せるのかを考えられます。
希望する髪型に届くまで、どの部分を残し、どの部分を整えながら伸ばすのかも見えてきます。
美容師から一番知りたいことは、今の髪の状態だけでなく、「自分の髪がこれからどうなっていくのか」という見通しではないでしょうか。
髪の戻り方は、全員が同じではありません
抗がん剤治療後の髪が伸びる速さや、治療前の太さ、毛量へ近づくまでの経過には個人差があります。
CISTAで抗がん剤治療後の髪を見てきた範囲では、若い方ほど、治療前に近い太さや毛量へ戻るのが早い傾向を感じます。
一方で、年齢が上がるにつれて、髪の太さや毛量、伸び方の個人差が大きくなる印象があります。
特に50代以降では、髪の長さだけでなく、トップや前髪の毛量について悩む方も増えてきます。
治療をきっかけとした身体の変化や、ホルモン治療などが重なっている場合もあります。
ただし、年齢だけで今後の髪を決めることはできません。
治療内容、体調、もともとの髪質などによっても経過は異なります。
美容師は、年齢だけで判断するのではなく、治療後の月数に対して現在どのくらい伸びているか、根元の太さや毛量がどのように変化しているかを確認します。
医学的な判断が必要なことは、主治医や皮膚科医へ確認してください。
前髪やトップが揃って伸びない。これでも大丈夫なの?
抗がん剤治療後の髪は、頭全体が同じ速さ、同じ太さで伸びるとは限りません。
トップや前髪がまだ短い一方で、もみあげや襟足が先に長くなることがあります。
同じ方の髪でも、場所によって太さ、密度、生えている方向が異なる場合があります。
美容師は、単純に全体を「何センチ切るか」だけで考えているわけではありません。
これから髪型を作るために残した方がよい部分と、現在の生活で扱いにくさにつながっている部分を分けて考えます。
髪型は、髪の長い部分と短い部分の組み合わせで作られています。
たとえ1cmでも長短の差を作ることができれば、今の長さなりに形を整えることはできます。
さらに1か月経てば、髪はまた少し伸びます。その時点の長さに合わせて、残す部分と整える部分を考え直すことができます。
理想の髪型に届くまでには時間がかかっても、施術を受けながら美容師と一緒に髪を育てていくことはできます。
髪がまとまらない。なんでこうなっちゃうの?
生え始めの髪は、長さ、太さ、生えている方向が揃っていないことがあります。
さらに、治療前にはなかった強いクセやうねりが加わると、短い髪でも大きなボリュームが出る場合があります。
水で濡らしたり、ドライヤーで押さえたりしても、すぐに元の方向へ戻ることがあります。
ケモカールが強く出ている場合は、さらに扱いづらくなります。
美容師は、乾かし方だけでなく、髪の長さ、生えている方向、クセの強さ、ボリュームの出ている場所を確認します。
髪がまとまらないのは、ご自身の手入れが悪いからとは限りません。
今の長さや髪質では、自宅で整えることが難しい時期があることを知っておいてください。
「髪が短いこと」だけが嫌なのではないかもしれません
髪が生え始めた頃は、少し伸びるだけでも嬉しかったと思います。
ところが、生え始めて半年ほど経つと、長さや毛量が揃わず、どこをどう整えればよいのか分からない状態になることがあります。
その頃になると、鏡を見るたびに髪が嫌になってしまう方もいます。
しかし、美容師の視点から見ると、「髪が短いから嫌」ということだけではない場合があります。
収拾がつかないまま、伸び放題になっている髪を見ることがつらい。
そのような気持ちが含まれていることもあります。
ベリーショートほどの長さでは、わずか数ミリを整えるだけでも印象が変わります。
長さだけでなく毛量を整えることで、今の髪なりに形が見えてくることもあります。
理想の髪型にはまだ届かなくても、「何もできない髪」ではありません。
シャンプーやトリートメントは、美容師に何を相談できる?
髪が短い時期も、頭皮には皮脂や汗が出ます。
一方で、治療後の頭皮は乾燥や刺激に敏感になっている場合があります。
美容師は、次のような点を見ながら、現在のお手入れが髪と頭皮に合っているかを考えます。
- 頭皮に皮脂や汚れが残っていないか
- 乾燥やつっぱりがないか
- 髪にきしみや絡まりが出ているか
- トリートメントが必要な長さか
- 使用中の商品で刺激を感じていないか
すべての方に同じシャンプーが合うわけではありません。
しかし、今より少しでも髪が扱いやすくなるように、現在の状態に合ったものを選ぶことはできます。
カットなどの施術を受けるときに、使える予算、現在使っている商品、困っていることを伝えると相談しやすくなります。
頭皮に赤み、痛み、湿疹などがある場合は、美容師ではなく医療機関へ相談してください。
育毛剤を使いたい。美容師には何を聞ける?
髪が生え始めると、「少しでも早く伸ばしたい」と思う方が多いと思います。
美容師は、頭皮の乾燥、べたつき、目で確認できる赤み、現在使っている商品の状態などを確認できます。
また、養毛料、育毛剤、発毛剤の違いや、頭皮用の保湿用品について一般的な説明をすることはできます。
ただし、発毛剤を使用できるか、髪が生えてこない原因は何かなど、医学的な判断は美容師にはできません。
発毛剤の使用や、髪の回復について医学的な不安がある場合は、主治医、皮膚科医、薬剤師へ相談してください。
白髪を染めたい。染めても大丈夫なの?
抗がん剤治療後に生えてきた髪は、以前より白髪が増えたように感じることがあります。
白髪が気になっても、「治療が終わって何か月経ったか」だけで、カラーができるとは判断できません。
美容師は、次のような点を確認します。
- 頭皮に傷や炎症がないか
- 部分による髪の太さの違い
- 場所による髪質の違い
- カラー剤が均一に反応しそうか
- セルフカラーの履歴がないか
- 今後予定している美容施術
生え始め直後の再生毛は、細く柔らかい髪と、少し太くなった髪が混在していることがあります。
場所によって髪の太さや状態が異なるため、カラー剤への反応も均一になるとは限りません。
どの程度の色なら目指せるのか、染まりにくい部分がありそうか、仕上がりにどのような差が出る可能性があるのか。施術前に説明を受けることが大切です。
この時期のカラーでは、仕上がりを断定できない場合があることを理解しておくと、美容師も現在の髪に合った提案をしやすくなります。
自宅で白髪を染めないようにしてください
再生毛は、場所によって太さや染まり方が異なります。
その状態を自分で均一に染めることは難しく、染まりにくい部分へ薬剤を重ねてしまうことがあります。
さらに注意したいのは、セルフカラーによるダメージによって、その後に行える縮毛矯正などの施術が限られる可能性があることです。
白髪を染めたい場合は、セルフカラーを行う前に、美容師へお願いしてください。
どうしても自宅で白髪を目立ちにくくしたい場合は、一般的な白髪染めではなく、カラーシャンプーやカラートリートメントを使う方法があります。
その場合も、商品の注意事項を確認し、使用前のテストを行ってください。頭皮に刺激や異常を感じた場合は、使用を中止してください。
カットなどを予約するときは、何を伝えればいい?
病気や治療内容について、詳しく説明する必要はありません。
ただし、抗がん剤治療後の再生毛であることと、現在希望している施術は伝えてください。
抗がん剤治療後の髪は、一般的なショートヘアとは状態が異なります。
再生毛を扱った経験が少ない美容師は、どこを切り、どこを残すべきか判断に迷うことがあります。
長年担当してもらっている美容師がいる場合は、その美容師へお願いする方法があります。
初めての美容室を探す場合は、抗がん剤治療後の再生毛や医療用ウィッグを扱った経験のある美容室を選ぶと安心です。
予約するときは、相談だけを希望するのではなく、現在受けたい施術と、困っていることを伝えます。
「抗がん剤治療後に生えてきた髪をカットしてほしいです」
「襟足やもみあげが伸び、ウィッグの収まりが悪くなっています」
「カットを受けながら、今後どのように伸ばせばよいか相談したいです」
「白髪染めを希望しています。今の髪に施術できるか見てほしいです」
今困っていることと、今後どうしていきたいのかが分かると、美容師も必要な提案をしやすくなります。
医療機関と美容師では、相談できることが違います
治療や薬、発毛剤の使用、頭皮の赤み、痛み、湿疹などについては、主治医、看護師、薬剤師、皮膚科医へ相談します。
頭皮に異常がない状態での、髪の伸び方、毎日のお手入れ、カラー、今後の髪型については、カットなどの施術を受けながら美容師へ相談できます。
髪が生え始めた時期について
今の髪を知ったら、次にできることがあります
まだ自毛だけで完成した髪型を作れなくても、今の髪を整え、ウィッグやトップピースで足りない部分を補うことができます。髪の見通しが立つことで、止めていた生活の予定も少しずつ動き始めます。
この時期に「できること」 今の髪を整えて、生活の予定を動かし始める 短い髪のカット、ウィッグの調整、トップピースの活用など、今の髪でできることを紹介しています。 今できることを見る ›この時期の参考記事
再生毛の伸び方、ケモカール、シャンプー、白髪、最初のカットなど、この時期に生まれる具体的な疑問を扱う記事を追加していきます。
何に困っているのかによって、相談する相手を分けてよいのです。
まとめ|見通しと方法が分かると、今の自分を少し受け入れやすくなります
抗がん剤治療後に髪が生え始めると、髪の伸び方、強いクセ、毎日のお手入れ、白髪など、新しい疑問が増えてきます。
まだ完成した髪型を作れない長さでも、伸びすぎた部分を整えるなど、その時期にできる施術があります。
施術を受けながら、現在の髪がどの段階にあるのか、これからどのように髪を伸ばしていくのかを美容師へ相談できます。
理想の髪型に戻るまでには、まだ時間がかかるかもしれません。
それでも、自分の髪の現在地が分かり、これからの見通しが立ち、今できる方法が見つかることで、不安は少し小さくなります。
施術後の髪を見たとき、理想とはまだ遠くても、「今の自分を少しだけ受け入れられそう」と思えることがあります。
見通しを立て、方法を見つけ、今の自分を少しずつ受け入れられるようにする。それが、この時期に美容師ができることであり、回復美容が大切にしていることです。

