抗がん剤治療後、産毛のような髪が少しずつ生え始めます。
最初の頃は、困っているというよりも、
「髪が生えてきた」
という喜びの方が大きいかもしれません。
ところが、髪が少しずつ伸びてくると、新しい疑問が生まれます。
「専用のシャンプーを使った方がいいの?」
「短い髪にもトリートメントは必要?」
「そろそろ美容室へ行ってもいい?」
「白髪は染められる?」
「ウィッグから髪がはみ出してきたら、どうすればいい?」
この時期は、できることが増える一方で、情報や選択肢も一気に増えていきます。
今回は、抗がん剤治療後に髪が生え始めてから10カ月前後までを中心に、美容室へ行く目安やカット、カラー、縮毛矯正、毎日のお手入れについてお話しします。
※髪や頭皮の回復には個人差があります。治療中または経過観察中に、育毛剤や発毛剤、カラー剤などを使用する場合は、治療を受けている医療機関にもご確認ください。
💡 【結論】髪型を作れなくても、美容室へ行く意味はあります
抗がん剤治療後の髪は、頭全体が同じ速さ、同じ太さで伸びるとは限りません。トップや前髪がまだ短い一方で、もみあげや襟足が先に長くなることがあります。
まだ完成した髪型を作れる長さではなくても、耳まわりや襟足を整えることで、ウィッグの収まりや毎日の扱いやすさは変わります。
さらに髪が伸びてケモカールによる膨らみが強くなると、髪の状態によっては縮毛矯正でクセを整え、フルウィッグの収まりをよくしたり、トップピースへ移行したりできる場合もあります。
その時期に完成した髪型を作れなくても、今の生活を楽にするためにできることがあります。
髪が生え始めた頃は、喜びの方が大きい
髪がまだ短い時期は、それほど多くの困りごとは生じません。
むしろ、少しずつ髪が増えていくことに喜びを感じる方が多いと思います。
その中で最初に出てくるのが、お手入れについての疑問です。
「頭皮や髪に優しい専用シャンプーが必要なのか」
「リンスやトリートメントを使った方がよいのか」
「短い髪でもドライヤーで乾かす必要があるのか」
特別なものを一度に揃える必要はありません。
ただし、治療後の頭皮は乾燥や刺激に敏感になっている場合があります。今まで使っていたものがしみたり、かゆみや赤みが出たりする場合は、無理に使い続けず、医療機関へ相談してください。
美容室へ行く目安は「ウィッグが収まらなくなった頃」
襟足やもみあげの髪は、トップや前髪より早く存在感が出ることがあります。
髪が太く、再生毛のクセも強い場合は、短くても大きなボリュームになります。
すると、自毛がウィッグの下からはみ出したり、内側で髪が持ち上がってウィッグが浮いたりします。
この状態になったら、まだ髪型を完成させられなくても、カットする意味があります。
美容室へ行く目安は、何センチ伸びたかだけではありません。
- ウィッグから自毛がはみ出す
- ウィッグが浮くようになった
- 耳まわりや襟足がまとまらない
- 自毛でいるときの形が気になる
このような変化を感じたら、一度カットを考えてよい時期です。
襟足やもみあげ、耳まわりを整えると、ウィッグが収まりやすくなります。また、自宅でウィッグを外して過ごしているときも、髪が少し整って見えるようになります。
「まだ短いから、美容室へ行っても何もできない」と我慢する必要はありません。
完成した髪型を作るためではなく、今の生活を少し楽にするためのカットがあります。
まだ髪型を作れなくても、カットで変わること
この時期のカットでできることは、主に次の3つです。
- ウィッグからはみ出す髪を整える
- 耳まわりや襟足のボリュームを抑える
- ウィッグを外したときの見た目を整える
トップや前髪の長さが足りなければ、一般的なショートヘアのような形を作ることはできません。
それでも、伸びすぎた部分だけを整えることで、全体の印象は変わります。
将来的には、フルウィッグからトップピースへ移行できる場合もあります。
ただし、強いケモカールと直線的なトップピースは、そのままではなじみにくいことがあります。
髪の状態によっては、ケモカールを整えるために縮毛矯正を行い、トップピースとなじませる方法もあります。
10カ月前後の縮毛矯正で、生活を楽にできる場合があります
抗がん剤治療後、本当に髪の扱いに困り始めるのは、治療終了から10カ月前後のことが多くあります。
髪が伸びてきた喜びがある一方で、ケモカールによるボリュームが強くなり、自分では抑えられなくなってくる時期です。
この時期の縮毛矯正は、完成した髪型を作るための施術とは少し目的が異なります。
- フルウィッグの内側で髪が膨らむのを抑える
- ウィッグの浮きやずれを減らす
- トップピースと自毛をなじませる
- 自宅でウィッグを外したときの扱いを楽にする
こうした生活上の困りごとを軽くするために、縮毛矯正を行える場合があります。
縮毛矯正をかけても、トップや前髪の長さが足りなければ、完成したヘアスタイルにはなりません。
それでも、膨らみや強いクセが落ち着くことで、フルウィッグが収まりやすくなったり、ウィッグを外して過ごす自宅での時間が快適になったりします。
トップや前髪をトップピースで補える状態であれば、フルウィッグからトップピースへ移行できる場合もあります。
施術できるかどうかは、治療終了からの期間だけでは決まりません。
再生毛の太さや長さ、頭皮の状態、現在の治療状況、縮毛矯正をかける目的などを確認し、今の髪に無理がないかを見ながら判断します。
「10カ月前後」と「2年前後」では、縮毛矯正の目的が違います
| 時期の目安 | 縮毛矯正の目的 | 目指す変化 |
|---|---|---|
| 10カ月前後 | ケモカールによる生活上の負担を減らす | フルウィッグの収まり、自宅での扱いやすさ、トップピースへの移行 |
| 2年前後 トップが耳に届く長さ | 自毛で成立する髪型を作る | フォルム、扱いやすさ、自毛での外出、仕上がりへの満足度 |
CISTAが「自毛で髪型を作るための縮毛矯正」の目安としているのは、ラストケモから2年前後が経過し、トップの髪が耳に届く程度まで伸びた頃です。
2年という目安は、それ以前には縮毛矯正ができないという意味ではありません。
縮毛矯正によってひとつの髪型を作り、仕上がりへの満足度を担保しやすくなる時期の目安です。
それより前の時期にも、カット、ウィッグの調整、トップピース、髪の状態に応じた縮毛矯正など、生活を楽にするために選べる方法があります。
前髪が下りないとき、今できること
抗がん剤治療後の再生毛では、前髪が上へ向かって生えたり、強く曲がったりして、額へ下りてこないことがあります。
強いクセそのものを整える方法は縮毛矯正です。ただし、縮毛矯正を行う目的は、髪の長さによって変わります。
治療後10カ月前後では、まだトップや前髪が短く、縮毛矯正をかけても完成した髪型を作れないことがあります。
それでも、ケモカールを弱めることで、ウィッグの収まりがよくなったり、自宅で過ごすときの扱いが楽になったりする場合があります。
一方、自毛で成立する髪型を作るためには、トップや前髪にある程度の長さが必要です。
髪の状態によっては、縮毛矯正を急がず、次のような方法で過ごすこともあります。
- カットで形を整える
- 帽子を使う
- ウィッグや前髪用の部分ウィッグを使う
- 分け目や毛流れを調整する
今はできないことだけを見るのではなく、その時期の目的に合った方法を選ぶことが大切です。
ウィッグを使いながら自毛を整えるメリット
ウィッグを使用している間も、自毛のカットや必要に応じた調整には意味があります。
自毛を整えると、次のような変化があります。
- ウィッグの収まりがよくなる
- ウィッグが浮きにくくなる
- 襟足やもみあげがはみ出しにくくなる
- ウィッグを外しているときも整って見える
- 自毛のお手入れがしやすくなる
ウィッグを使っているから、自毛はそのままでよいとは限りません。
自毛が伸びるほど、ウィッグとのバランスを調整する必要が出てきます。
一般の美容室へ行っても大丈夫?
長年担当してもらっている美容師さんがいる場合は、まずその方へ相談する方法があります。
ただし、抗がん剤治療後の髪は、一般的なショートカットとは状態が異なります。
髪の長さが揃っていない。
場所によって太さが違う。
強いケモカールがある。
どこを切り、どこを残すべきか分かりにくい。
経験のない美容師にとっては、判断が難しい状態です。
これまでの担当美容師さんへお願いする場合は、可能であれば治療前、または予約時に事情を伝えておくとよいでしょう。
病名や治療内容を詳しく説明する必要はありません。
「抗がん剤治療後に髪が生えてきました」
「ウィッグから襟足がはみ出して困っています」
「今後は自毛を伸ばしていきたいです」
このように、今困っていることと、これからどうしたいのかを伝えてください。
長年の担当美容師がいない場合は、抗がん剤治療後の再生毛や医療用ウィッグを扱った経験のある美容室を探す方が安心です。
何も伝えず、初めての一般美容室へ行くことは、あまりおすすめしません。美容師が再生毛の状態を理解できず、将来残すべき髪まで短く切ってしまう可能性があるからです。
シャンプーは「優しいだけ」で選ばない
髪が短い時期も、頭皮には皮脂や汗が出ます。
そのため、刺激が少ないことだけでなく、頭皮の汚れを無理なく落とせることも大切です。
髪がまだごく短く、きしみが問題にならない時期には、シンプルな洗浄成分で対応できる場合もあります。ただし、石けん系のシャンプーは髪が伸びるときしみやすくなります。
髪が伸びてきたら、頭皮の状態と髪の長さに合ったシャンプーへ切り替えてください。
シャンプーの性質は、主に使用されている洗浄成分によって変わります。広告に書かれた「頭皮に優しい」「ダメージケア」といった言葉だけでは、自分に合うか判断しにくいことがあります。
迷った場合は、現在の頭皮と髪を実際に見てもらい、美容師へ相談するのもよいでしょう。
かゆみ、赤み、湿疹などがある場合は、美容師ではなく医師へ相談してください。
短い髪にも、トリートメントとドライヤーを
髪が短くても、トリートメントによって髪の手触りが柔らかくなり、扱いやすくなることがあります。
ただし、頭皮へ多量につける必要はありません。髪へなじませ、十分にすすいでください。
ドライヤーも、髪が短い時期から使うことをおすすめします。
濡れたまま長時間過ごすのではなく、熱くなりすぎない温度で、頭皮から少し離して乾かします。
高温の風を同じ場所へ当て続ける必要はありません。頭皮が熱い、乾燥すると感じた場合は、温度を下げてください。
乾燥しやすい方は、頭皮用の保湿ローションを使うこともできます。
全身用や顔用の保湿剤は、頭皮には油分が多い場合があります。頭皮への使用を想定して作られたものをおすすめします。
治療後の頭皮に炎症などがある場合は、自己判断で使用せず、医療機関へ確認してください。
育毛剤や頭皮ケア用品は必要?
「少しでも早く髪を伸ばしたい」と思うのは自然なことです。
ただし、育毛剤、養毛料、発毛剤は、同じものではありません。
一般的に化粧品として販売される養毛料は、頭皮を清潔に保ち、うるおいを与えることが主な目的です。
医薬部外品の育毛剤は、育毛や脱毛予防などを目的としています。製品によってはアルコールなどが含まれているため、治療後の敏感な頭皮には刺激になる場合があります。
ミノキシジルなどを含む発毛剤は医薬品です。治療後だからという理由だけで、自己判断で使用するものではありません。
使用を考える場合は、主治医や皮膚科医、薬剤師へ確認してください。
美容室で行う頭皮ケアもありますが、発毛を保証する医療行為ではありません。頭皮環境を整えるための美容ケアとして考える必要があります。
髪の回復速度には、年齢や治療内容、体調などによる個人差があります。
特にトップや前髪の成長が心配な場合は、まず治療を受けた医療機関へ相談し、必要に応じて皮膚科などにつないでもらうと安心です。
白髪はいつから染められる?
生え始めの髪は、とても細く柔らかいため、カラー剤が均一に反応しないことがあります。
少しあとから生えてくる髪は徐々に太くなりますが、その途中では、染まりやすい髪と染まりにくい髪が混在することがあります。
そのため、「治療終了から何カ月経てば、誰でも染められる」と一律には決められません。
頭皮に傷や炎症がなく、髪にある程度の長さと太さが出てきた段階で、美容師が状態を確認して判断します。治療内容によって注意点が異なるため、医療機関へも確認してください。
フルウィッグを使用している間は、自毛の白髪が外から見えないこともあります。
急いで染める必要がなければ、ウィッグを外す時期に合わせて考えても遅くはありません。
おしゃれ染めや白髪染めが可能になる時期はありますが、再生毛が安定する前のブリーチは勧めません。
明るくすることよりも、これから伸ばしていく髪を守ることを優先してください。
自宅での白髪染めは避けてください
この時期のセルフカラーはおすすめしません。
再生毛は、場所によって太さや染まり方が異なります。その状態を自分で均一に染めることは難しく、必要以上に薬剤を重ねてしまう可能性があります。
一度強く傷めてしまうと、その後、美容室でカラーや縮毛矯正などの施術を行うことが難しくなる場合があります。
早く元の生活へ戻りたいのに、そのための選択肢を自分で狭めてしまうことになりかねません。
白髪を一時的に目立ちにくくしたい場合は、カラートリートメントを選ぶこともできます。
その場合も、信頼できるメーカーの商品を選び、注意事項を確認し、必ず使用前のテストを行ってください。頭皮に刺激や異常を感じた場合は、すぐに使用を中止してください。
この時期に知りたいのは「どこで、何ができるのか」
髪がほとんどない時期は、選択肢もそれほど多くありません。
しかし、髪が伸び始めると、できることと知りたいことが一気に増えてきます。
- カットした方がよいのか
- ウィッグを調整するのか
- トップピースへ変えられるのか
- 縮毛矯正で生活を楽にできるのか
- 白髪を染められるのか
- 育毛剤を使うのか
- 一般の美容室へ行ってよいのか
情報が多すぎるため、自分だけで正しい答えを探すことが、かえって難しくなる時期です。
今の自分は、どこへ行けば、何ができるのか。
この時期に本当に知りたいのは、このことだと思います。
治療や薬、頭皮の症状については、主治医や看護師、薬剤師へ相談する。
今の髪をカットで整えることや、ウィッグとの収まりについては、再生毛に対応できる美容師へ相談する。
ケモカールによる生活上の負担が大きい場合は、縮毛矯正でできることがあるのか、再生毛への施術経験がある美容師に髪を見てもらう。
この先の髪がどう変化し、いつ自毛で髪型を作れるのかは、髪の成長を見ながら一つずつ決めていく。
すべての答えを、ひとりで探す必要はありません。
まとめ|最初の美容室は、髪型を完成させるためだけではありません
抗がん剤治療後の髪が生え始めた頃は、困りごとよりも、生えてきた喜びの方が大きいと思います。
やがて襟足やもみあげが伸び、ウィッグからはみ出したり、収まりが悪くなったりします。
そのときが、最初のカットを考える目安です。
まだトップや前髪が短く、完成した髪型を作れなくても、耳まわりや襟足を整えることで、ウィッグも自毛も扱いやすくなります。
さらに、10カ月前後になってケモカールによる負担が大きくなった場合は、髪の状態によって縮毛矯正を行い、フルウィッグの収まりをよくしたり、トップピースへ移行したりできる場合があります。
一方、CISTAが自毛で成立する髪型を作るための縮毛矯正の目安としているのは、ラストケモから2年前後が経過し、トップが耳に届く長さになった頃です。
10カ月前後と2年前後では、縮毛矯正を行う目的が違います。
カラーや育毛剤についても、治療終了からの期間だけで決めず、頭皮、髪、治療の状態を確認して考えます。
この時期の目的は、急いで元の髪型へ戻すことだけではありません。
今ある髪を守りながら、その時期の生活を少しずつ楽にしていくことです。
今の髪にできることを、成長に合わせて考える
抗がん剤治療後の髪には、カットで整える時期、ウィッグとの収まりを調整する時期、ケモカールによる負担を軽くする時期、自毛で髪型を作る時期があります。回復美容では、時間だけで判断せず、今の髪の長さや状態、生活の中で困っていることに合わせて、できる方法を考えます。
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